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東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)154号 判決

一 請求の原因一ないし三の事実は、三(本件審決の理由の要点)中の被告が誤記と主張する部分を除き、当事者間に争いがない。そして、成立に争いのない甲第一号証(本件審決謄本)、後掲甲第二、第三号証によれば、本件審決の理由の要点中被告主張の各「伸長状態」の記載(本件審決謄本四頁一四行、五頁七、一〇、二〇行、八頁五行の各「伸長状態」の記載)は、いずれも「伸張状態」の誤記であることが認められる。

二 そこで、原告主張の本件審決を取り消すべき事由について判断する。

1 請求の原因四1について

(一) 原告は、本件審決がA項の構成はすべて引用例に記載されていると認定判断したことが誤りである旨主張するので判断する。

成立に争いのない甲第三号証(昭和四八年特許出願公開第九四九八三号公報)によれば、引用発明は、「連続的に走行するラベル用原紙を一定の形状に截断する方法並びにその装置に関する」(甲第三号証一頁右下欄一六行ないし一八行)発明であることが認められるところ、同号証によれば、引用例には、<1>「ラベル(半製品)の製作には、印刷工程と截断工程とが前後して行なわれる。今日の印刷技術の発達は、印刷機械の高速度化に成功している」(甲第三号証二頁左上欄五行ないし八行)、<2>「高速度のもとに截断工程を進められる」(同頁右上欄八行)、<3>「このラベル用原紙1のラベル紙3の表面には、前段の印刷工程で所定のラベルの形状に似合つた印刷が施され、一定の速度V1で連続的に走行して繰出されており、次段の截断工程に導びかれる。」(同頁右上欄一六行ないし二〇行)と記載されていることが認められ、右事実によれば、引用発明は、高速度のもとで印刷工程、截断工程を行うものであり、また、その印刷材料が連続的に同一方向に送られるものであることが認められる(引用発明が高速度のもとで印刷工程、截断工程を行うものであり、その印刷材料が連続的に同一方向に送られるものであることは、原告の認めるところである。)。更に、成立に争いのない甲第二号証(昭和五九年特許出願公告第三九三一四号公報)によれば、本件公報には、従来技術について、「高速度でシール、ラベル等を印刷する場合、印刷材料を送りながら輪転印刷を行い、併せて円周面に切刃を植設したカツターロールを用いて(「用いが」は誤記と認める。)連続的に所要の切刃加工を行つている」(甲第二号証一頁二欄四行ないし七行)と記載されていることが認められる。また、成立に争いのない甲第五号証(昭和四九年特許出願公告第三五〇三七号公報)によれば、右公報に記載された発明は、ラベル製造機に係るもので、同公報には、「5は印刷版が取付けられたシリンダーであつてその回りに数個のインクローラー6が取付けられ、更に下部は圧胴7と接触してその間を通過する連続用紙1の表面に印刷を施し得る如く構成されている」(甲第五号証一頁二欄九行ないし一四行)と記載されていることが認められる。これらの事実及び右甲第五号証の図面の第1図及び第3図によれば、高速度でシール、ラベル等を印刷する場合、印刷材料を送りながら輪転印刷を行うことが、本件発明の出願前周知の技術的事項であつたこと(高速度でシール、ラベル等を印刷する場合、印刷材料を送りながら輪転印刷を行うことが本件発明の出願前周知の技術的事項であつたことは、原告の認めるところである。)及び輪転印刷においては印刷材料は伸張状態で移送されることがそれぞれ認められる。右事実によれば、前叙の引用発明の「高速度のもとでの印刷」は、輪転印刷によるものであること及び印刷時における印刷材料の伸張状態での移送を意味しているものと認められる。そして、前掲甲第三号証によれば、引用例には、<4>「ラベル紙3のラベル3aが第3図に例示するような楕円形に整然と打抜かれ」(甲第三号証三頁左上欄一五、一六行)、<5>「ラベル用原紙1は可動枠12の前後位置にある一対の送りローラ36a、36b及び37a、37bによつて一定の走行速度のもとに送り出されている」(同四頁右上欄六行ないし九行)と記載されていることが認められ、右事実及び同号証の図面第4図に記載されたラベル用原紙1の状態によれば、引用発明のラベル用原紙は、截断工程においても伸張状態にあることが認められる(ラベル用原紙が送りローラ36a、36bと同37a、37bとの間で伸張状態にあることは原告の認めるところである。)。更に、同号証によれば、引用例には、前記<5>の記載に続き、<6>「この走行速度は、通常前段に設置される印刷機の印刷速度によつて決定される」(同号証四頁右上欄九、一〇行)と記載されていることが認められ、右事実によれば、引用発明のラベル用原紙は、截断装置と印刷機とを同一の走行速度で走行するものであること及び截断装置と印刷機との間でも伸張状態であることが認められる。以上の事実を総合すると、引用発明では、輪転印刷機から、輪転印刷機と截断装置との間及び截断装置までの間、ラベル用原紙は伸張状態で連続的に同一進行方向に送られるものであることが認められる。

そうすると、「A項の構成はすべて引用例に記載されている」とした本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の右主張は採用できない。

(二) 原告は、本件発明のA項の送る手段は、輪転印刷手段と平板状の切刃を有するカツター手段との組合せに対応するものであるのに対し、被告の主張する送る手段は輪転印刷手段とカツターロールとの組合せに対応するものであるので、被告は対比を誤つて主張している旨主張するが、前記当事者間に争いがない本件発明の要旨によれば、A項は「送る手段」の構成を規定するものであることが明らかであり、原告の主張する各組合せの相違により「送る手段」の構成にどのような相違がでてくるのかについての具体的主張がないから、原告の右主張は、主張自体理由がない。

(三) 原告は、被告が引用例にはA項の技術的構成は全く具備されていないことを既に認めていると主張するが、その事実を認めるに足る証拠はないので採用できない。

2 同四2について

(一) 原告は、B項の「印刷材料にシール、ラベル等のシール素片を連続的に所定間隔で印刷をする輪転印刷手段」が引用例には開示されていない旨主張する。

しかしながら、前記認定の引用例の<3>、<4>の記載及び引用例の図面の第3図によれば、ラベル用原紙(印刷材料)にラベル3a(シール、ラベル等のシール素片)を連続的に所定間隔で印刷をする印刷手段が、引用例に開示されていることが認められ、引用発明の印刷手段が輪転印刷手段を採用していることは前叙のとおりであるから、B項は引用例に開示されていると認めることができ、同旨の本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の右主張は採用できない。

(二) 原告は、被告が引用例には「輪転印刷手段」は具備されていないことを既に認めている旨主張するが、右事実を認めるに足る証拠はないので採用できない。

3 同四3について

(一) 原告は、C項の「印刷材料に印刷したシール素片の形状、印刷位置に対応」するとの構成は、引用例に開示がない旨主張する。

しかしながら、前掲甲第三号証によれば、引用例には、「截断板4は、上部に平面状の截断面4aを有し」(同号証二頁左下欄二、三行)、「可動板5は、それの下面にラベルの輪廓と同一形状の型刃5aが例えば二個配設してある」(同左下欄六、七行)、「型刃5aが台紙2上のラベル原紙1に接触し、それを截断(打抜き)している」(同左下欄二〇行ないし同右下欄一行)、「この截断方法では、型刃を平面的に構成し」(同三頁右上欄一〇行)と記載されていることが認められ、右事実及び引用例の図面の第1図(B)によれば、引用発明の截断板4、可動板5は、本件発明の押え手段、カツター手段にそれぞれ対応すること、截断板及び可動板はラベル用原紙を挟んでいること、型刃がラベル用原紙に面接触すること、平板状の切刃を有する可動板(カツター手段)は、ラベル用原紙(印刷材料)に印刷したラベル(シール素片)の形状、印刷位置に対応するものであることが認められる。そうすると、C項の構成は引用例に開示されているということができるから、C項の構成も引用例に記載されているとした本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の右主張は採用できない。

(二) 原告は、請求の原因四3(一)記載の本件公報の各記載を理由として、本件発明は、カツター手段の移動量をシールの大きさに応じて小さく又は大きく変えることができ、このことが、C項の「印刷材料に印刷したシール素片の形状、印刷位置に対応」するとの構成である旨主張するところ、前掲甲第三号証によれば、引用例には、請求の原因四3(一)において原告が指摘する記載があることが認められるが、前記当事者間に争いのない本件発明の要旨によれば、C項の当該部分は、「該印刷材料に印刷したシール素片の形状、印刷位置に対応し」とのみ規定されているだけであることが認められるから、原告の右主張は、一実施例に基づく主張であつて本件発明の要旨に基づかない主張であるといわざるを得ず、採用できない。

(三) 原告は、C項の「対応しするカツター手段」は引用例には具備されていないことを被告も既に認めていると主張するが、右事実を認めるに足る証拠はないので採用できない。

4 同四4について

原告は、D項の構成である「印刷材料を挟んで該カツター手段と対向する押え手段」は、引用例には記載されていない旨主張するが、前記3において認定判断したとおり、引用発明の截断板4(押え手段)と可動板5(カツター手段)とは、ラベル用原紙1(印刷材料)を挟んで対向しているものであるから、D項の構成も引用例に記載されているとした本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の主張は採用できない。

5 同四5について

(一) 原告は、E項における<1>印刷材料が伸張状態で進行、<2>シール素片と切刃を対向させ、<3>切刃加工を行うよう上記カツター手段、<5>移動させる手段を具備させた、の<1><2><3><5>の構成は引用例には開示がない旨主張している。

しかしながら、右<1>、<2>及び<3>の構成は、先に検討したところ(前記1、2及び4)によれば、A項、C項及びD項の構成から生じるものであり、<5>の「切刃加工後切刃部を開放させるよう移動させる手段」は、前掲甲第三号証によつて認められる引用例の「同図(C)は截断板4と可動板5とが前進しつつ後者の可動板5が上昇しきつた位置にきて、それらが共に後退する前の状態であり」(同号証二頁右下欄二行ないし五行)との記載及び引用例の四頁左下欄一九行ないし右下欄二〇行の記載並びに引用例の図面第1図(C)、第4図及び第5図により認めることができる。したがつて、E項の構成も引用例に記載されているとした本件審決の認定判断には原告主張のような誤りはないから、原告の右主張は採用できない。

(二) 原告は、被告が右<1><2><3><5>の技術的構成は引用例には具備されていないことを既に認めていると主張するが、右事実を認めるに足る証拠はないので採用できない。

6 同四6について

(一) 原告は、F項の構成は、A項ないしE項の各手段を備えた装置全体を表現したにすぎず、A項ないしE項の構成を引用例のラベル用原紙の連続截断装置のものが備えていない以上、この項について特に検討する必要がなく、本件審決の認定判断は誤りである旨主張するが、既に検討したところ(前記1ないし5)によれば、引用発明はA項ないしE項を備えているものであり、しかも、F項は、A項ないしE項の各手段を備えた装置全体を表現したにすぎないことは原告の自認するところであるから、本件審決の認定判断に誤りはなく、原告の右主張は採用できない。

(二) 原告は、被告が引用発明には、A項ないしE項の構成のすべての手段が具備されていないことを既に認めていると主張するが、右事実を認めるに足る証拠はないので採用できない。

7 同四7について

原告は、別紙「本件に係わる経緯」記載の事実の存在を理由に本件審決の認定判断が誤りである旨主張するが、右に主張するところは、本件特許を無効とするとした本件審決の掲げる理由に対応した具体的主張ではないから、原告の右主張する事実をもつて本件審決が違法であるとするに由ない。

三 以上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないのでこれを棄却することとする。

〔編注〕本件発明の要旨は左のとおりである。

「A、印刷材料を伸張状態で連続的に同一進行方向に送る手段と、

B、該印刷材料にシール、ラベル等のシール素片を連続的に所定間隔で印刷をする輪転印刷手段と、

C、該印刷材料に印刷したシール素片の形状、印刷位置に対応しかつ該シール素片に面接触する平板状の切刃を有するカツター手段と、

D、上記印刷材料を挟んで該カツター手段と対向する押え手段と、

E、該印刷材料が伸張状態で進行しているときシール素片と切刃を対向させ切刃加工を行うよう上記カツター手段を印刷材料の進行と同期的に前進させると共に切刃と押え手段の間に印刷材料を挟着し切刃加工後切刃部を開放させるよう移動させる手段

F、を具備させたシール、ラベル等の印刷装置」

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